民主主義の崩壊 ゲッペルスとトランプ(3)
◯人物ではなく、手法
ナチス・ドイツと今のアメリカは、政治制度、歴史的文脈、暴力性の度合いにおいて、当然、異なります。この番組が焦点を当てたのは、感情を優先し、敵と味方を単純化し、映像と演出によって支持を拡大する政治手法です。この手法は、時代やイデオロギーを超えて再現され得るものです。その点において両者は、比較できるのです。
◯民主主義の内部崩壊
民主主義は外部からではなく、内部から崩壊するー
ヒトラーの独裁は、突如として出現したわけではなく、国民の支持と合法的手続きを通じて進行しました。
トランプ現象においても、選挙制度や言論の自由が利用され、結果として、分断と不信が拡大しました。
民主主義の制度が存在することと、それが機能していることは、同義ではないのです。
この番組は、日本についても、自分たちは例外ではないという認識を促す意図がありそうです。番組で、日本の政治家を直接的に批判することはありませんが、SNS時代の言論環境、感情的言説の拡散、単純化された敵対構図といった要素は、日本においても顕在化しつつあります。未来の日本として提示されていると解釈できます。
公共放送の役割は、特定の政治勢力を批判することではなく、民主主義の前提条件を問い直すことでしょう。映像メディアと感情政治が結びついたとき、民主主義がいかに脆弱になり得るかを示すのです。これは、歴史的警告です。
トランプが批判的に描かれているようにみえるのは、彼が現代における象徴的事例であるからです。本質的な問いは、トランプが正しいか否かではなく、私たちは感情に支配される主体になっていないかという点にあります。その問いが視聴者に投げかけられているのです。
今回の総選挙にも、当然、通じるところでしょう。