自立について
自営業者で客が100人にいるとしたら、それは100の支えです。そこに雇われて働いているとしたら、それは、1つの支えだけです。
最近、やたらと資本主義批判で、労働者が搾取されているように資本家が攻撃されます。しかし、資本家はリスクをとっています。もちろん、そのリスクをカバーする以上に儲かっているのなら、別の意味で搾取といえるかもしれません。
店主が、自分の給料をほとんど取れず、従業員に月給を満額、払っていることもあるわけです。先のたとえなら、客の100の支えが崩れたときも、店主には従業員を支える義務があるので、借りるかストック分から支払うのです。そうでないと、廃業となり、従業員も失職します。
本を出しても、かけた時間、費用に対してペイできればよい方です。そのときまでを損益通算して、どうにかなっていたらよいほうでしょう。自転車操業で動いている限りは仕事になっても動かないときは生活できなくなります。しかし、そこから別の収益に派生することもありましょう。講演や研修、取材、講師など。試験問題に使われ、思わぬ印税が入ることもあります。本も10倍、100倍と売れると、かなりの印税収入になります。普通の著者の100冊分以上、1冊で稼ぎ出してる人もいるわけです。
ここで著者が売上の10パーセントしか得られないから搾取と言っても、出版社は著者の10倍以上のヘッジをしているといえます。売れないと著者は初版分印税だけですが、出版元は大赤字となります。
ほぼギャンブルのようですが、これは、音楽やアプリになるとさらに拡大します。リスクを負ったものがその分、儲けるということです。資本を投じた人が利益を得るのが資本主義です。
で、確かに掛けたコスト、才能や努力と、収益はあるところまでは相関すると思います。しかし、工業社会では、まだしも、情報化社会では、それ以上の収益に関しては、不労所得に近いのです。情報の複製に原価があまりかからないからです。もっとも、売れた分だけ世の中にに貢献したのですから、ノーベル賞の年金ほどは得てもよいでしょう。しかし、このコストに対する成功の見返りが天文学的に膨れ上がったために、宝くじなどとは比べものにならないほど、儲ける個人や会社が出てきたわけです。資産のある人はそこに投じ、さらに資産を増やすということです。
ロングテールの時代と言われつつも、現実には、今までトップクラスで稼げた人だけが何倍も稼いで、中間層以下が全く稼げなくなっているわけです。つまり寡占化です。富の偏向、格差の拡大です。
ロングテールは、パレートの法則を覆ったと言われていました。パレートの法則は8:2、社会において2割の人が全体の8割の収益を得るなどという考え方です。独占は薄らいだと。
しかし、現実には、どの国も1割の人が8割に近い富を独占する方に動いたのです。世界人口の1%の富裕層が、残りの99%の資産の総額と同じくらい持っているのです。