fukugen(福言):出会い気づき変わるためのヒント

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資本主義の行方

◯モノづくりからIT金融へ

資本主義は、20世紀末には、もう行き場を失っていました。その結果、先進国では、交易条件も悪化していったのです。

交易条件とは、輸入財1単位当たりに対する輸出財1単位当たりの価格です。財を1単位輸出したときに、何単位の財を輸入できるかを表した指標です。

新興国の経済成長による需要増加や投機資金の流入などを受け、資源である輸入物価が上昇して、一方、それを加工した輸出品の価格が上がらないのです。

つまり、モノづくりでは、もはや、利益が得られなくなったのです。

このほどのウクライナ危機でも、日本は、この交易条件を著しく悪化させていますね。

 

そこで、アメリカは、ITと金融に重点を移し、金融のグローバリゼーションが始まったのです。それを推し進めたのが、新自由主義、つまり市場原理主義です。それは、1980年代レーガノミクスで始まりました。

 

◯二極化

南北問題が、リーマンショックまでにウォール街サブプライム層の二極で代表されるものとなりました。

豊かな国と貧しい国だったのが、国家の中で、富んでいる者と貧しい者に二極化したということです。豊かな先進国2割と貧しい途上国8割の分裂が、国内で起きたようなものです。日本も昭和の末期までの一億総中流で、世界において15%の富裕層に入っていたのです。

証券会社の飛ばしは、大口のお得意客だけに損失補填をしましたが、それを国が行なっているようなものです。それは、災害復興からコロナ禍対策まで通じてみられます。

リッチな人とバンクを国家社会主義で守り、中間層と弱者には、新自由主義の自己責任で対するのです。おのずと二極化は進みます。そして、裕福な人は、公的資金で財産を保護され、貧しい人は、住宅まで奪われていったのです。

 

◯資本主義の歴史

資本主義は、誕生のときから、わずかな人間が利益を独占していくためのものでした。

資本の自己増殖と利潤の極大化を求めるためには、常にフロンティア=周辺を必要とします。帝国主義と相性がよいはずです。それは無限でないのですから、マルチ商法と同じく行き詰まるのです。

もちろん、何度かは、それを食い止める動きがありました。

18世紀 アダムスミス「道徳感情論」、徳の道から堕落を説く

19世紀 カールマルクス資本論」 利潤は資本家の搾取とみる

20世紀 ジョンメイナードケインズ、市場でなく政府が責任持つべきとする

それ以前にも、文学者、芸術家や宗教家で、強欲を批判して、分配の重要性を説いた人はたくさんいます。シェークスピアやダンテの作品など。

しかし、世界はオイルショック以降、ミルトン・フリーマンやフリードリヒ・ハイエク新自由主義に巻き込まれていったのです。つまり、21世紀のグローバル資本主義です。

 

◯未来からの収奪

フロンティアが無限であれば過剰は生じません。しかし、無限でなくなると、どうなるでしょう。それは、未来からの収奪となります。環境問題と同じです。親子ローンみたいものです。

こういう体制を世界に拡大する目的で、科学主義と民主主義が共存し、動かしているということです。

 

◯リスク 商いと利子

利子は黙っていても勝手に増えていくもので、しかも神による創造でないから許してはならないものでした。流通で利益を得ることをよくないとする考えは、ギリシア哲学のアリストテレス政治学にもあり、イスラム教、ユダヤ教キリスト教にもあります。

中世においても利子を取るなどは、批判的に捉えられました。日本でも士農工商でしたね。

ただし、異邦人からは、利子をとってもよいとされました。キリスト教では、イスラム教ほど法を守ることが、生活で重視されていなかったので、産業革命が起きたと言われています。

1215年、ローマ教会が上限33%の利子率を認め、不確実なものの貸し付けに利子をつけていいとなり、リスク性資本が誕生したのです。

(参考「資本主義の終焉と歴史の危機」水野和夫 集英社新書)