整えないこと、の続きです。
◯自己肯定ブーム
論理的に、いえ、常識的に考えればわかるのですが、自分を肯定すると言うのは、変わらない状態をよしとすることですから、そうするほど今の状態が続きます。
すでに仕事が断らなくてはならないほど回っており、コンデション維持のために整える工夫を迫られている人なら、ダウンサイジングや優先順位の組み換えも自由でしょう。財産があれば、息抜きのクルーズ旅行などもできます。多くの人は、そういう立場ではないでしょう。
どちらかというと、今の状態がずっと続いてもよいと思っていない人が、そういう自己啓発本を買うわけです。
しかし、身動きできないくらい忙しくならないと、そうしたアドバイスが本当に活きることはないし、実際にそうなると、自分なりにそうした方法を見出していくものなのです。
そういう立場にない人が、そのアドバイスを全て実行したところで、自己満足に時間を費やし、いっときの安心感を得るだけでしょう。自分を肯定したいから買って、自分が肯定できるように、そのアドバイスに従って動くのですから、当然、そのようになります。
そうしたアドバイスの中に、仕事、勉強、運動などを、死ぬ気でやることなどは、含まれていません。読んだら誰でもできることをが大半です。
たとえば、
ー恋愛ほど自律神経を乱すものはないー
などというアドバイスは正論です。整えるわけですから。
私の言葉で言うなら、これらのことばは、鍛錬でなく調整なのです。
ひどい本になると、好きな仕事だけをしよう、嫌な人とは会わないようにしよう、休みたいときには休もう、なんていうアドバイスが羅列してあるのもあります。
そんなこと言ったり実行したら、仕事は来なくなり、人間関係もなくなり、信用も将来もなくなります。それはそれでもよい人に通用するアドバイスです。誰でもすぐ実行できますが、将来のことを考えないなら、ということです。
会社を辞めて独立しよう、などという本と同じで、そういう本を買う人は、もっとも独立をしてはいけない人なのです。
そういう点で、自己啓発本などは、そんな内容では足らなくなったところから本当の意味が出てくるのです。そこで感心したり満足してしたりしている以上、意味がないのです。
でも読むなとは言いません。さっさと読みたいだけ全て読んでしまって、卒業しましょう。
◯飴だけ舐めるな
アスリートたちの休日の過ごし方を そっくり見習って、アスリートの力がつくわけがありません。
ただでさえ、人間は、保守的で変わりにくいものです。今の自分を否定しない限り、変わりようがないのです。
どうせなら、今の自分の心を揺り動かし、心底からその生き方をひっくり返すようなもの、人、本に巡りあってください。絶対には自分ではできないと思うようなアドバイスを噛み締めてみてください。
ただし、落ち込んでどうしようもないとき、非常事態には、自己肯定してみるのは大切です。前向きに生きるためです。そういうときに一時、頼るのはよいでしょう。それは早く全力で前向きに生きるためです。それを捨て、がむしゃらに動かなくては何も変わらないのです。
◯アドバイスの活かし方
ということで、活躍をしている人や活躍した人のアドバイスを受けるときは、気をつけなくてはなりません。その人の不遇時代や最初に運をつかんだところあたり、あなたと同じ年代の頃の過ごし方や考え方を学ぶなら、まだよいでしょう。
そのとき、こうしておけばよかったというような、後で反省して言うような、無難な円満な優等生的なアドバイスなどは、
若いときには、これから世に出て行こうというときには、間に受けてはならないのです。
メンタル面を支えてくれるような人の多くは、悪気もなく、無意識に、あなたのためと思って、あなたを肯定し励ましてくれます。あなたに優しくすると、あなたに好かれます。
しかし、それは、結果として、偏った新興宗教のグルのように、あなたの可能性を奪い、搾取しているだけということも少なくないのです。大多数の人は、気づかないまま、ファンとなっていくのです。
安易な安心の繰り返しは、より大きな不安と不安定から、あなたが抜け出すチャンスを奪ってしまいます。筋力が弱っているのを鍛え直そうとせず、マッサージに毎日行って、そこから抜け出せなくなっている状態を想像してみてください。
◯本を読んで街に出よう。
もとい、勉強したり仕事をしたり、自分に厳しくして能力をつけていかないとしたら、あなた自身の責任です。決して、その先生やそうした本やそういうアドバイスのせいではありません。
ー書を捨てよ町へ出ようー
って言ったのは、寺山修司ですが、
今は本をたくさん読んでいる、と言う人が少なくなったので、
あえて、本をたくさん読んで、街に出よ、といいます。
捨てるなら、気休めのために時間を奪うネット、SNSのほうでしょう。
そういえば、NHKで4K修復版の「天井桟敷の人々」が放映されました。(1/27)
懐かしかったなぁ。若いときに背伸びに背伸びして、2回続けてみた映画です。ナチスの占領下のフランスで作られた映画だけに、今でもパリの文化の力、生きる力を感じます。
こんな時代だからこそ、背伸びしましょうよ。