主張せず、否定せず、詰め込まず、そのように日本人のもつ、間や余白というのがあります。それは、俳句でみるとわかりやすいですね。俳句のよしあしをわかるためには、日本で生まれ、日本で育ち、日本語に詳しくなければ、なかなか難しいことと思います。
夏井いつきさんは、テレビ番組の「プレバト‼︎」での俳句の添削で、この世界最短文学の価値を見直すのに多大な貢献をしてきました。ちなみにプレバトとは、以前のタイトル、「使える芸能人は誰だ!?プレッシャーバトル!!」の略です。
俳句と出会ったタレントやお笑い芸人たちがメキメキと句作の腕を上げていくのがわかります。彼らがもつ言葉のセンスのよさを再確認させられます。夏井さんの1の指摘から10を知っていくわけです。マニュアルや技法に頼らなくても、最低限のルールを指摘されると自分なりに吸収していく、歳時記などの勉強はしているとしても、ときに、何十年もずっと学んでいた人を超してしまうような作品をつくりあげてしまう、というのも私はそれまで新聞や雑誌などの優秀作などに、てんで興味がなかったからです。今、読んでもそれほど、おもしろく思えません。
作品には、発想力と言葉のデータベース、人生体験、全てが問われます。そういう実力本位の世界が成立していて、だからこそ、視聴者にも受け入れられるわけです。自分で詠めるかどうかは別として、優れたものを優れているとわかる、それはすごいことです。それを精査する力は、日本人なら、かなりのハイレベルで持っているのですね。
夏井さんの添削が、作品たるあり方、成り立ちのプロセスを具体的に示すので、鑑賞力もつき、つくるときの修正力も上がってきます。理論や定石、その世界でなければわからない希少価値の有無などもわかってきます。
無駄を一切、省きつつ、説明的にならないという点も学ばされます。受け手の感受性を信頼して、かなり自由な解釈ができるだけの余白を残すことなども、です。外国人にもわかりやすい解説かもしれません。
今の時代を切り取る、落語などとも似ていますが、昔のもので、わからないものはわかりやすくするが、ある程度は相手を信じて、日本人ならそこまでは知っているだろう、知っていて欲しい、と言うギリギリのところにとどめ、受け手の想像力に任せるのです。
ここでくどいと、通の人は逃げてしまいます。普及し一般化するにつれて、わかりやすくすることで質の劣化になってしまうのです。この両立は、至難の技です。名人と凡人が配分よく、いないと成り立たないからです。
伝統の強みもあるのでしょうが、この古典的文芸の伝承と新なる伝統の創造との間で葛藤しているところが、常に見られるのが、スリリングでインパクト大です。
普通は、こういう番組は、1、2年くらいで、質が落ちるのですが、こうして続いているのは出演者が俳人に化けていくプロセスがみられことの楽しさもあるでしょう。
この番組には、こうした演出面に、格付けなどの日本人が好む検定、ランキングなどといったいろんな工夫がされており、学ばされる点が多々あります。しかも、生花や水彩画など、他の芸術ジャンルと競うようにもなっています。今、俳句が番組のメインになったのは、夏井いつきさんの能力、キャラと出演者の才能とのコラボです。
彼女の添削に関しても、ネットでは、さらなる添削も行われ、そういうことがうかがえるのもネット社会の恩恵の1つです。ググってください。
たとえば、俳句 HAIKU: プレバト 夏井先生の添削を添削する (添削記事特集編)
Wikipediaで番組の変遷を知ると、さらにおもしろくなるでしょう。
◯プレバトの他の分野と査定人
いけばな 査定員:前野博紀→假屋崎省吾
盛り付け 査定員:土井善晴
水彩画 査定員:野村重存、、
消しゴムはんこ 査定員:田口奈津子
絵手紙 査定員:花城祐子
書道 査定員:日守菜穂子→武田双葉
和紙ちぎり絵 査定員:辻井花洲
丸シールアート 査定員:大村雪乃
バルーンアート 査定員:家泉あづさ。
バナナアート 査定員:エンドケイプ
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