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「モニタリング」歌手論 天童よしみさんと小林幸子さん

TV番組の「人間観察モニタリング」#に出た歌い手を取り上げます。

天童よしみさんと小林幸子さんです。

 

#<2024 4/13  放送 

天童よしみ「ワインレッドの心」「Lemon」「炎」

小林幸子「新時代」「千本桜」>

 

 このベテラン歌手お二人を、これまで取り上げてこなかったのは、ともに美空ひばりの影響を幼い頃から直接、受けていて、美空ひばりの歌で足りたという思いがあるからです。(私には美空ひばりも扱いにくかったのですが、その理由は、かなり以前から触れてきました)

お二人は、年齢も一年しか違わず、小中学校の頃から、プロ顔負けの歌唱力でプロにも認められていた点で、よく似ています。(もっと年下なら、島津亜矢さんでしょうか。)

そして、現在の時点、両者、ほぼ70歳において、比べてみます。

 

天童よしみさんは、美空ひばりの、ど真ん中のところを保持したまま、体からしっかりした声で歌っています。歌が「ワインレッドの心」という歌謡曲であったこともありますが、揺るがない安定した歌唱力です。本人には完全でないまでも、声のノリなどでは、よい歌唱だったことでしょう。他の2曲より自由に見せ場をつくっています。

 

それに対して、小林幸子さんは、声に驚きました。喉の状態が悪いのかと思ったくらいです。以前、この番組で、「L emon」で聞いたときは、もっと、よかったのですが。「千本桜」以降、Jポップスに近い今風の歌を歌い、自ら、ロボットのような装置化をしていって、声が変化していったのかもしれません。もとより、こういう歌唱になりやすいところはありましたが、今の歌唱に対応しやすいところで歌っているのです。そのため、もともと持っていたしなやかな声を失ったのかと危惧します。歌唱テクニックで補っているところが目立ちました。加齢の影響が出てきたのでしょうか。それは、自分の身体能力に合わせた声から、意図的に、憧れや好きな方向に無理矢理持っていった、もんたよしのりさんや長渕剛さんほどに極端でないにしろ、どうも、加工すぎた、自ら、2.5次元化、アンドロイド化しているように見えます。

 

私は、マイクを使わないところでの、声そのものの魅力を活かした表現と音楽性を伴う創造力に重点をおいて、みるスタンスです。

歌唱としての構成力、展開力、基本的な声からのしぜんな表現力やメリハリの付け方、見せ方では、天童よしみさんの方が評価できます。評価しやすいといってもよいでしょうか。

まぁ、2人の早熟な歌い手が、同じような時代に出て、こういう違う方向に転じていくのは、興味深いことだと思います。