◯空虚化することば
ことばの虚無化を生成AIの文章を引用して示した作品が、今回、芥川賞を獲りました。
九段理江さんの「東京都同情塔」です。
それは、生理的に拒否したいネーミング、「トウキョウシンパシータワー」という罪人に寛容な刑務所をめぐっての話です。
この作品を読んでいて退屈なところは、生成AIのつくりだす文章の引用部分です。これがそういう実験的試みだから、そこを読むに耐えない私は、まんまとその策略に引っかかっているのでしょう。
いや、そこで、そういった空虚な文章をそう感じるのが、人間の感性であるから、よいのです。しかし、そのはずなのに、もはや、そんなことはなく、読める人の方が多いのではないかと思います。
つまり、与えられたものを、何も考えず、慣らされていっているのです。
今や、もっと空虚な短いつぶやきを読み取る作業に、日々、私たちは従事させられています。いや、自ら望んで、それに自分の人生を費やしているわけです。
その分、こうした小説や思想、歴史書などの長い文章をしっかりと読解して、自分の血肉にする機会、時間が減り続けている、これは恐るべきことかもしれません。