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虚構の言葉 芥川賞『東京都同情塔』

芥川賞『東京都同情塔』#への共感

小説は、けっこう途中で投げ出したり、飛ばし読みすることが多いのですが、時折、最後まで読まされてしまう作品があります。

この著者、九段理江さんは、私と頭に入っているものや思考の組み立てが似ているように感じました。どこがどうというわけではないのですが。

このブログを読んでいる方にはわかるかもしれません。

読みにくい内容なのに、私には読みやすかったのです。

 

この作品は、私と小説との距離を縮めた、いや、取り払ってくれたようにも思ったのです。

親近感というより、今、私が小説を書くと、こういう文体かと気づかせてくれました。

そういう点では、昔、読んだ作家、倉橋由美子#を思い出しました。

 

人間を建築物のように見て、また、東京同情塔でなく、東京都同情塔という発案に歓喜する、

著者が作中の人物と交差するので、フィクション感が薄れるせいかもしれません。

 

退屈なのは、生成AIのつくりだす案やその文章の引用部分です。

この作品がそういう試みだから、そこを読むに耐えない私は、まんまとその策略に引っかかっているのでしょう。

 

6日に述べた「時効撤廃」の殺人犯への被害者家族の心情、

そこへ弁護士の人権擁護、冤罪、検察の横暴への不信という対立、

罪を犯した人への寛容論と関係します。

 

 

#『東京都同情塔』

<本作の舞台は、ザハ・ハディドの国立競技場が完成し、犯罪者は「同情されるべき人々」という言説が広がったもう一つの日本。生成AIや寛容論、ポリティカル・コレクトネスといった、「今」の問題を通して、日本の未来を預言する野心作。

ザハの国立競技場が完成し、寛容論が浸透したもう一つの日本で、新しい刑務所「シンパシータワートーキョー」が建てられることに。

犯罪者に寛容になれない建築家・牧名は、仕事と信条の乖離に苦悩しながら、パワフルに未来を追求する。ゆるふわな言葉と実のない正義の関係を豊かなフロウで暴く、生成AI時代の預言の書。>

 

#九段理江

<1990年9月27日、埼玉生まれ。2021年『悪い音楽』で第126回文學界新人賞を受賞しデビュー。22年1月に発表された『Schoolgirl』が、23年3月、第73回芸術選奨新人賞を受賞。11月『しをかくうま』が第45回野間文芸新人賞を受賞。24年1月、第170回芥川龍之介賞を受賞。>

 

#倉橋由美子 (1935-2005)

パルタイ『聖少女』『スミヤキストQの冒険』『アマノン国往還記』など。

 

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