ハンタウイルス(アンデスウイルス)について
ハンタウイルス(正式名称:オルソハンタウイルス)は、主にネズミなどのげっ歯類を宿主とするウイルスであり、人間がこれに感染するとハンタウイルス肺症候群(HPS)などの深刻な病態を引き起こします。
「MVホンディウス号での集団感染」。実際には、2018年末から2019年初頭にかけて、アルゼンチンのチュブ州エプイェンという町において、アンデスウイルスによる地域コミュニティ内での集団感染が発生。乗客らが船に乗る前にハンタウイルスに感染していたのか、船上でウイルスに曝露したのかはまだ確実ではない。船内にはネズミがいないとされ、陸上で感染した人が密接に一緒に過ごした人にうつした可能性があるそうです。
このウイルスの最大の特徴は、30〜50%という高い致死率にあります。感染すると、1〜5週間程度の潜伏期間を経て、初期には高熱や筋肉痛、頭痛といった風邪に近い症状が現れますが、その後は急速に肺水腫や呼吸不全へと進行し、生命を脅かす事態に陥ります。
感染経路については、感染したネズミの尿や糞、唾液に含まれるウイルスが乾燥し、空気中に舞い上がった粒子(エアロゾル)を吸い込むことが主な原因です。
アンデスウイルスはハンタウイルス属の中で唯一、人から人への感染が確認されていますが、その頻度は限定的です。現時点では新型コロナウイルスのような世界的なパンデミックに至るリスクは低いと分析されています。
日本国内では、HPSを引き起こすタイプのウイルスを保有するげっ歯類は生息していないため、国内での自然感染リスクは極めて低いと言えます。現在このウイルスに対する特効薬や承認されたワクチンは存在せず、治療は人工呼吸器の装着など、症状を和らげ生命を維持する対症療法が中心となります。
こうした感染症への対策として重要なのは、人間・動物・環境の健康を一体として捉えるワンヘルスの視点です。野生動物の生息域への過度な接触や環境変化が、未知の感染症を呼び込む引き金となることを理解し、ネズミを寄せ付けない環境作りや適切な衛生管理を徹底することが、将来的なリスクを抑える鍵となります。