◯トランプ政権による「最大限の圧力」と軍事介入
第2次トランプ政権は、イランに対して「最大限の圧力(Maximum Pressure)」をさらに強化する方針を打ち出しました。トランプ大統領は、イランの核開発阻止と影響力排除を掲げ、経済制裁の徹底と軍事的威嚇を進めてきました。
2025年6月の米軍によるイラン核施設への空爆で、イランが核兵器製造に不可欠な濃縮活動を加速させていると主張し、イスラエルとの共同作戦によりナタンズやイスファハンの関連施設を破壊したと発表しました。
さらに直近の2026年2月末から、大規模な軍事作戦が開始。イランのミサイル拠点や海軍力、治安組織を標的としました。
トランプ大統領は「イランの脅威を根絶するための断固たる措置」と位置づけています。
こうした強硬策は、中東情勢をさらに複雑な多極化へと導いています。
サウジアラビアなどの湾岸諸国は、イランの脅威低下を歓迎しつつも、戦争が石油インフラや経済に波及することを警戒しています。アブラハム合意によるイスラエルとの融和ムードは、対イラン包囲網としての側面を持ちつつも、ガザ情勢による世論の反発と米イラン激突の余波の中で、不安定な均衡を強いられています。
イランは、国内の混乱を抱えつつも、中東各地の親イラン武装勢力を通じた報復を辞さない姿勢を見せています。ロシアや中国との連携を強めることで、アメリカ主導の包囲網を突破しようとする動いています。
アメリカの同盟国間でも、トランプ政権の独断的な軍事行動に対する温度差が顕著です。欧州諸国が外交的解決を訴え続ける一方で、イスラエルはアメリカの軍事介入を最大限に利用し、宿敵であるイランの弱体化を推し進めようとしています。
中東は、アラブ対イスラエルという旧来の枠組みを脱し、アメリカ・イスラエルによる対イラン直接介入という危機状況にあるといえるでしょう。
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これまでの経緯
サウジアラビアは長らく「アラブの盟主」と呼ばれてきました。石油資源と二大聖地メッカとメディナの宗教的権威を背景に影響力を保持してきたからです。湾岸諸国には安全保障や経済協力の面で主導的立場を築き、アラブ世界全体に強い発言力をもってきました。
一方で、トルコおよびイランも、歴史的帝国の系譜と軍事力・人口規模を背景に、大きな影響を及ぼしてきました。この三国は、競合し、中東の勢力均衡を形成してきました。
今世紀に入り、アメリカの支援を受けたイスラエルの存在感が増大、イスラエルは高度な軍事技術と情報能力を背景に周辺諸国への抑止力を強め、経済・ハイテク分野でも国際的地位を高めました。
当初、多くのアラブ諸国はパレスチナ問題を理由にイスラエルを敵視してきましたが、イランの影響力拡大を脅威と見なす一部の国々、UAE、バーレーンなどは、2020年のアブラハム合意を通じてイスラエルとの国交正常化に踏み切りました。
しかし、2023年10月、ガザ紛争で、サウジアラビアはイスラエルとの国交正常化交渉を一時中断し、パレスチナ国家樹立を前提とする姿勢を鮮明にしています。
かつての「アラブ対イスラエル」という対立軸が、パレスチナの人道状況を背景に強まっています。トルコはイスラエルを強く非難し、対決姿勢を強めています。一方で、トルコはアゼルバイジャンへの支援を通じた南コーカサスでの影響力拡大や中央アジア諸国との連帯を深める独自の広域外交を展開しています。
現在、イスラエルにとって最大の軍事的脅威は、イランです。イランは、ヒズボラやフーシ派などの親イラン武装勢力を通じて影響力を行使しています。また、2023年にはサウジアラビアとの国交を正常化させるなど、アラブ諸国との対話も保持しています。
今日の中東は、従来のアラブ対イスラエルという構図を超え、パレスチナ問題の再燃、イランの地域戦略、トルコの台頭が複雑に絡み合う多極的で流動的な秩序へと移行しています。