続きです。
◯移民の影響
移民が、移住する地に抱く感情が、感謝か怒りかというのは、大きな違いです。
例えば、旧植民地から宗主国への移民は、祖先を騙したり搾取していたりした国に感謝することはないでしょう。自分たちの土地を奪ったり、収奪した子孫と仲良くしょうとはしません。自分たちだけで、新たな共同体をつくります。そこで文明の衝突が起きます。宗教的、政治的対立も、です。
◯日本にとって
移民に何を期待するのか、その国に入る理由は何なのか、誰が誰を必要としているのかです。文化になじませて生涯を共にするのか、労働力として利用して去らせるのか。長期的に考えなければなりません。
これは、これまで閉ざされていた日本にとって、大きな問題となっていくでしょう。島国として閉ざされてきた日本と日本人に、こうした複雑なことに対処するのは、苦手なことでしょう。ただ、ある意味で寛容であり排他的である日本も変わりつつありますから、次世代はうまくやっていけるでしょう。で、そこで問題なのは、エトスの継承をどう保つかなのです。
◯アイデンティティと国
自分がどうしてこういうふうに生まれついたのか、自分がこういう運命のもとで引き受けるべきもの、アイデンティティーの1つが、その国の国民であるということです。
海外に行くと、よくわかることでしょう。いや、海外に行けるのも、日本国パスポートのおかげです。
家から出て、道路を使えるのも、国の整備のおかげです。その税金をはらっを払ってはいるのですが、私たちは、生まれながらにして組み込まれているのです。
日本人であること、その共同体の一員と自覚することで、国というものは、成り立っているのです。
続けます。
#エトスについて
<エトノス(ethnos,ギリシャ語)、エトニ(フランス語)、エスニック・グループ(エスニシティー)(ethnic group, ethnicity,)とは、一定の文化的特徴を基準として他と区別される共同体をいう。土地、血縁関係、言語の共有(母語)や、宗教、伝承、社会組織などがその基準となる。
民族(Ethnicity)とは、言語・人種・文化・歴史的運命を共有し、同族意識によって結ばれた人々の集団である。複数の概念が存在する。
Ethnic group:文化(言語、習慣、宗教など)で区分される集団(人類学における定義)。
Nation:18世紀以降、社会の近代化や「国民国家の形成」に晒されたEthnic groupのうち、エリートが「民族運動」を行って「政治力」を獲得し、その「政治力」によって「民族」としての認知を獲得したものをいう。さらに「国家」の獲得に成功したものは「国民」と訳される。(政治学における定義)
Tribe:一般には「部族」だが、民族」と訳される場合もある。「民族集団」より小単位。→
Race:「人種」を意味するが、稀に「民族」と訳される場合がある。>