◯学校と若者の声
昨日から「NHKニュース、君の声が聞きたい」、1週間続くそうです。
まずは、学校、そこへの不満。
生徒の意見を取り入れてくれない、先生の言うことは少し納得いかないし、学校の仕組みにはたくさん不満がある、4人に1人が不満。
で、教育論に触れようと思いました。
そこで、生徒の声を聞いて授業に活かす、どんな授業をつくりたいかなど生徒の発言機会を増やしたいとか、学校が決めずに子供にやらせて失敗してもサポートして学ばせていく、など。
このあたりは、文科省学校デザインプロジェクト♯に沿ったものでしょう。不登校が増えているので、授業のあり方だけでなく過ごしやすい学校のあり方に子供の声を聞く、とか。
まさに顧客満足度を高めるマーケティング手法です。生徒と共に学校をつくっていく、理想的ですね。そのこと自体は、先日述べたプロジェクト型学習や体験学習とつながるので否定しません。
◯弱者の救済
こういうときに引っ張り出されるのは、いじめられていたり不登校だったり学習障害のあった子供です。もちろん、その後、人生が好転してうまくいったから出演できるのです。
そこを救うのは必要ですが、なによりこういう人の発言は、誰も否定できないからです。
そこで、このNHKニュースでも、中川翔子さんが生出演して感想を言わされるのです。
「学校側も対応が柔軟で、子供たちも学ぶことに前のめりで、SNSの時代に生きているせいか、自分の思ったことを言葉にする能力がすごく、、昔とは違いますね。」
とコメントします。
いや、比べるなら、それは、昔とでなく、優秀校とでなく、中川さんがいじめを受けていた学校の今と昔でしょう。というツッコミなどスルーして摺り替えてしまう、メディアとそれに合わせるゲストの構図。
◯創造性の履き違え
もとい、小中学校の現場の先生の大変さは、私なぞには想像できません。ただ、NHKが取り上げるのは、大体が、こうした優秀校です。
これまでの学校の言う通りにやる良い子ではなく、学校の意を忖度してアイデアを出したり発言したりすることに長けた子が、主導権を握るのです。
メディアで報道されるのも、そういう子だと彼らは知っています。建前の整え方も、ユーチューバから学んでいます。それについては、そのうち触れたく思います。
少なくとも、中川さんよりも昔、私たちは、学校の方針に疑問も持たず適応したし、授業が素晴らしいとも思わなかったし、クラブ活動も不理尽できつかった、先生は好き嫌いがはっきりわかれるほど個性的でした。それでも、決められた枠内で目一杯の創造性を発揮し、ぎりぎりの駆け引きをし、はみだし、こっぴどく怒られもしたけど、これ以上ないほど楽しく充実した日々だった。全て見えていたとはもちろん思いませんが。
学校生活は限られた期間ですから、生徒から提案されそうなことぐらい予め改善し、あるいはその改善ができない旨を明示しておけないのでしょうか。その上で与えた体制の中で創意工夫に最大限集中させた方が、その能力は、発揮できるでしょう。
まず、学校の今のあり方、校則から体制まで、教員やその背後の教育関係者が徹底して、吟味し改良しておくことでしょう。教育者なら、そこは魂でしょうに。
自分たちでもよくないのでは、と思うことを生徒に出させて議論するくらいなら、その前に教育者側で片付けとけよ、ということです。
現状はともかく考えとしても、そこを煮詰めてもたないままの改革など、砂上の楼閣です。創造性の名の元、ずっと改革し続けては同じことを繰り返している愚鈍さに気づきましょうよ。
野球や柔道のクラブ活動の中で力をつけるより、新しいスポーツを皆で考えてつくって楽しむ方が、本当に力がつき、充実できると考えているようなのは、ユーチューバ的な発想なんでしょうかね。
学校は楽しむのでなく力をつけるところでは?
もっとあるものを大事に使わないともったいないと思うのです。今あるものを使いきらずに、視点を変えてもろくなことになりません。
国が生活保護や就労支援だけをしていては、その国の産業力、経済力は、衰えていく一方でしょう。弱者は救うべき、というか弱者とみなさず、苦境に陥った人をそのとき手助けすることは大切です。しかし、本筋は、将来、社会を支え、自立できる人材づくりのための教育改革でしょう。
◯説明や答えよりも
放映のなかで、「音楽ってなんで学習するの?」という紙に、いろんな答えが書かれていました。そういうことを説明する、その価値を納得させて、学ばせていく。
それも商取引と同じです。説明に納得いかないものからは学ばず、説明がうまくつくものを選んでしまう、それでは、ただの消費者です。その答えは各人が生涯をかけてみつけていけばよいのです。
こうして説明しきれないものを無理に説明することで、無限の世界を矮小化してしまうのです。説明して答えを与え、教えることで、頭でっかちな子供をつくるのです。
昨日、寺小屋の音読に触れました。ただ自分の声で身体から読むことを繰り返すだけで根っこの力になっていく、そうした力が今の先生たちには欠けてきた、とはいうものの、一流の文章には、その力がきちんと宿っているのです。子供には伝わるのです。
その力を感じ、じっくりと身体化するような場と時間を与えてほしいと、願うのです。
#文科省学校デザインプロジェクト <我が国の学校教育は、学校関係者や子供たち自身の努力によって、国際的な学力調査において高い成果を出す一方、学ぶ意欲などについては課題があることや、不登校の児童生徒の増加、 また授業や部活動等の学校生活に十分な意義や当事者性を見出せない子供たちが相当数いることも推測されます。こうした観点から、子供たちのよりよい学校生活に向けた各学校等における取組の検討・実施等に資するよう、子供たちの他、学校関係者等の幅広い層が、学校を中心とした子供たちを取り巻く環境について共に考えるラウンドテーブルを実施しました。>