カール・マルクスの「資本論」をまとめつつ、現代に当てはめてみました。
◯労働と商品の独占
労働が生み出すのは、本来、社会的な富です。しかし、資本主義社会での労働は、商品を生み出します。
ドイツでは、貧しい人が森で拾っていた枝を、窃盗とする法律ができました。薪木が商品となって、売り物になると、資本家によって独占されます。すると、お金のない人には、希少品となるです。
◯使用価値を超えた無限の欲望
欲求を満たすために、人は労働してきましたが、生活の衣食住への欲望には限界がありました。
ところが、資本主義社会では、資本を増やすこと自体が目的になるので、この欲望に限界がなくなります。
必要なものよりも売れるものが重視されます。それは、人に役立つという使用価値と同じではありません。
労働価値説では、生産する労働時間によって価値が決まります。使用価値を無視した効率化が、社会に必要なものやサービスを削っていきます。
◯労働力という商品価値
資本は、絶えず価値を増やしながら自己増殖していく運動です。
労働力は、労働能力で使われて初めて労働として生じます。
労働は、労働力という新しい商品価値となって、資本家が買うのです。
労働者は、その労働力を自由に売ることができるようになりますが、働き方の自由を失うわけです。そうした裁量権も剰余価値も、資本家のものとなります。
労働者は、生産手段から切り離されると生活ができません。生きるのに必要なものを生産する手立てを持たず、労働力を売り続けます。
資本主義社会では、共同体で自由になることは、いざとなったときに切り離されるのです。
働かなくてもよい未来が来るのではなく、働けなくなって生活できなくなるというのが、ディストピアです。
職人の仕事に、資本が入ってくるとどうなるでしょうか。職人の言い分を聞かないと、仕事をしてもらえないのであればともかく、大量生産できるとなれば、職人はいらないのです。
生産工程を分業すると、職人は、部分的な仕事しかできなくなります。フォードの生産工程でお馴染みだと思います。自立できないのです。
◯ブルシットジョブとデジタル・プロレタリアート
機械の生産力が向上すると、仕事にあぶれていくことになります。女性や子供でも働けるようにもなったのです。かつて機械化が進んだ頃も、人間が疎外されていくといわれました。誰とでも置き換え可能で、働きがいがない仕事になるからです。
機械に置き換えできないのは、エッセンシャルワークです。これが長時間労働、低賃金ですから、大変に困ったことです。
一方で、文化人類学者デビットグレーバーが、BULLSHIT JOBと名づけた高給とりは、生産力が高いだけで意味のない労働を作り出しているのです。
SNSでは、ほとんど、ただで、いろんな情報をやり取りされています。価値のある情報を無償で提供するのに、働かされているのです。そこでIT業界は、儲かっていくわけです。つまり、私たちは、デジタル・プロレタリアートなのです。
日本では、作業の分担することは、浮世絵制作などでも行われてきました。先日、亡くなった、さいとうたかをさんの仕事現場もそうです。回転寿司が普及しても、高級寿司店は潰れません。要は、レベルと規模の違いではないかとも思うのです。
結局は、何もかもニ極化をし、格差が拡大し、中間層がいなくなって、不安定な社会となってしまうのです。
#ブルシット・ジョブの5種類
取り巻き 偉そうな気分を味わせたりする。受付係、管理アシスタント、ドアアテンダント。
脅し屋 他人を脅したり欺いたりする。ロビイスト、顧問弁護士、テレマーケティング業者、広報スペシャリスト。
尻ぬぐい 組織のなかの欠陥を取り繕うため。粗雑なコードを修復するプログラマー、バッグが到着しない乗客を落ち着かせる航空会社のデスクスタッフ。
書類穴埋め人 やっていないことを、やっていると主張する。調査管理者、社内の雑誌ジャーナリスト、企業コンプライアンス担当者。
タスクマスター 他人に仕事を割り当てる、ブルシット・ジョブを作り出す。中間管理職