エンジェルスの大谷翔平選手がアメリカン・リーグMVPに輝きました。日本人としては、イチロー選手以来、2人目、しかも、1位票満票での受賞です。
2018年に肘の手術をした大谷選手が、今年、大活躍したのは、心身ともに鍛えて調整して、絶好調で迎えられたからで、初めて何の問題もなく、試合に臨めると、そのシーズン前の言葉を結果で証明したことになります。彼がこの成績を収めたのは、単に手術前の状態に戻しただけでなく、これまでにない心身の状態にまで持っていったということです。
大谷選手は誰よりも一所懸命、練習する選手だったのですが、今シーズン、練習に参加しないで自分なりのウォーミングアップをする時間を取るようになりました。練習方法の改良、フォームの改良などで、感覚やイメージ、使い方を変えることによって、パフォーマンスを上げたわけです。
フィジカルに関しては、225キロというウェイトトレーニングで、軸足を鍛え、背筋の筋肉を支えとして充実させました。それと科学的なセンサーを最大限に利用したのです。ブラストモーションという、スイングのスピード、スイングの角度、バットの軌道を一目でわかるようのにバットの先に取り付けるセンサーを使い、スイングのチェックをし、修正をしました。肘の方にも、腕の角度、腕のスピード、肘の角度を図るセンサーをつけました。データがあっても使い切れない選手が多いなかで、彼はしっかりと使い切ったのです。
こういった工夫によって、投打を超一流のものとしていったわけです。フォームの改善などはテレビ番組でも伝えられていますが、日々、進化した結果、開花したということです。
メンタルトレーニングについても触れます。大谷選手は、マンダラ図を使って、自分の目標を書いています。それを見ると、18歳の高校生のときに具体的な目標を掲げ、それをほぼ実現しているのです。目標については、ドラフト一位8球団、とあります。そのために掲げられた8つの第二目標は、体つくり、メンタル、そして投球のことでしょうが、コントロール、キレ、スピード160キロ、変化球、と続きます。それに加えて、人間性、運とあります。そして、これらを達成するために、またそれぞれ8つのなすべきことが考えられているようです。
運のところには、挨拶、ゴミ拾い、部屋そうじ、道具を大切に扱う、プラス思考、応援される人間になる、本を読む、審判さんへの態度、この8つです。今回ファンの心をとらえた行動に、ゴミを拾うこと、審判とフレンドリーにすること、などがありましたね。
こうしてみると、大谷選手の持って生まれた素行の良さと思われていたことも、この中の目標の中にきちんと書いてあります。ということは、最初からできていたわけではなく、目標にしなければいけないほど、できていなかった、それをコツコツと実行してきたわけです。
アメリカのファンだけでなく、相手選手の心も捉えてしまった大谷選手の、紳士的なフレンドリーな振る舞いは、その目標にきちんと記してあり、彼は、これを守って実践していたのです。
天才が無意識に行なっていることではなく、ここまで細かくきちんと努力目標として掲げ、日々、繰り返して守ってきた、今も守っているのです。
私たちは、160キロ投げたり、ホームランを何本も打つことはできません。しかしこのようにして、私たちができることもあるわけです。そこから見習っていきましょう。
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