映画「MINAMATAーミナマタ」について、事実関連を追加します。若干、ネタバレになりますが、これを知ってから見ても面白いと思います。
- 1968年5月18日、チッソ水俣工場アセトアルデヒド製造を停止。
- 9月26日、厚生省は、水俣病を公害病と認定。「熊本における水俣病は、新日本窒素肥料水俣工場のアセトアルデヒド製造工程で副生されたメチル水銀化合物が原因である」と発表。
- 1970年11月28日、チッソ定時株主総会、一次訴訟原告家族たちが、チッソの社長に会うため、一株株主として参加。
- (1971年 9月29日、新潟水俣病第1次訴訟で原告勝訴の判決。企業の過失責任を前提とする損害賠償。)
- 1971年、水俣病患者、新たに16人認定。患者総数150人、うち死者48人。
- 1973年3月20日、熊本水俣病第一次訴訟、原告勝訴判決。
チッソの社長が現金を賄賂として渡そうとして断られる場面や、公の場でのチッソ社長の人間味が漏れるような表情などは、実際にはなかったでしょう。小屋が全焼することも。ましてユージンが変装して病院に潜入、書類を写すのは、やりすぎ。ここで猫の映像となると、ユージンが証拠を見つけたように世界中の人たちは誤解してしまうでしょう。
時系列でみると、ユージンが日本に行ったときには、すでに厚生省が公に公害と認定しているわけです。また、最高作品を撮った時点と事件などの前後関係も違います。
ドラマとして盛り上げるために、そのような構成にしたのはよくわかります。アメリカの映画らしい所以です。
などと考えると、この作品は、史実に基づくのではなく、史実を元にして着想を得た、というクレジットが適切かと。(映画監督や演出家、脚本家を目指す人は、事実からどのようにして作品に組み立てるのかを、学ぶのにはよい材料かもしれません。)
なぜなら、すでに過去の事として片付いたことならともかく、水俣病に関しては現在も続いていることです。この映画自体ドキュメンタリー的に、現在の環境問題にまでつなげようとしているからなおさら、その区別をどこかで明記しなくては、と思います。
ただ、このような作品が世界的な映画スターによってつくられ、配給されることはありがたいことです。
9月17日、発売の「週刊金曜日」特集記事の
取材協力にスタジオ提供と照明ADしました。